辻斬りギークス

アメコミ・カートゥーン情報+映画感想ブログ

感想:ストップモーションでなければ評価されなかった映画『KUBO/クボ 二本の弦の秘密 』

下馬評が高い『KUBO/クボ 二本の弦の秘密 』観てきました。映像は100点!音楽も100点!でもシナリオは…30点!という印象。悪くないけれど良くもない、ストップモーションでなければ評価されなかったであろう作品だと思いました。(実際は超美麗ストップモーションなので評価されているわけですが…)

f:id:horogiri:20171203002021j:plain

gaga.ne.jp

 

ストーリー部分がどうにも雑というか描写不足なので、”泣けるような”感動を期待して映画館に行くと肩透かしを食らいそう。ストップモーションに重きを置くのであれば、こんなに素晴らしい映画はこの世にないと思います。

 

謎が謎を呼ぶ展開

f:id:horogiri:20171203094853j:plain

三味線の音色で折り紙に命を与え、意のままに操るという、不思議な力を持つ少年・クボ。幼い頃、闇の魔力を持つ祖父にねらわれ、クボを助けようとした父親は命を落とした。その時片目を奪われたクボは、最果ての地まで逃れ母と暮らしていたが、更なる闇の刺客によって母さえも失くしてしまう。父母の仇を討つ旅に出たクボは、道中出会った面倒見の良いサルと、ノリは軽いが弓の名手のクワガタという仲間を得る。やがて、自身が執拗に狙われる理由が、最愛の母がかつて犯した悲しい罪にあることを知り──。かつて母と父に何があったのか?三味線に隠された秘密とは? 祖父である〈月の帝〉と相対したとき、全ては明らかとなる──。

(映画公式サイトより)

 人里離れた場所で母親と暮らす少年クボ。ある日「夜になったら家にいなくてはいけない」という母の言いつけを破ると、クボを狙う刺客が闇から現れます。刺客の力は強く、対抗するには『折れずの刀』『負けずの鎧』『破れずの兜』の三つが必要であると告げられ、クボは母親に旅に送り出されます。

あらすじだけ書くと単純な話のようですが、実際はふんだんに謎が散りばめられています。昼は廃人で夜にしか喋らない母親、三味線の音色で折り紙を操る事ができるクボの能力、サルはなぜクボの事を命がけで守ろうとするのか、途中で出会ったクワガタの化け物武士の正体とは…そして極めつけは二人の刺客。

f:id:horogiri:20171203101240j:plain

刺客っていうのが上の女性二人なのですが、クボに対して「私たちはあなたの叔母よ。迎えに来たわ」って言うんですね。叔母こわすぎでしょ。

クボも観客も何もわからないまま刀・鎧・兜を探す旅は始まります。

 

圧倒的な映像美 ・最高の音楽

f:id:horogiri:20171203095105j:plain

ストップモーションのクオリティは本当に高いです。動き、アングル、質感、表情、どれをとっても今までのライカ作品、いや世界で最も素晴らしいストップモーションなのではないでしょうか。特に海の波の表現や、キャラクターの複雑な表情・所作は本当にすごい。3Dレベルです。

吉田兄弟津軽三味線も耳に心地よく、キャラクターが競り合いをしているシーンなどは特に映像と音がマッチしており、見ていてとても楽しいです。

youtu.be

 吉田兄弟いいよね。

 

描写不足感は否めない

f:id:horogiri:20171203124252j:plain

旅に出されたクボは、まず最初にサルと出会います。サルはクボが持っていた木彫りのお守りに命が宿った存在で、母親が最後の力を振り絞り自分に命を与えた事、これからクボは刀・鎧・兜を探す必要がある事、そして自分はクボを絶対に守るという事を話します。

つまり母親が死んでからクボの旅がスタートしているわけなのですが、母親の死を悲しむクボの描写がマジで薄い。先に言ってしまうと映画が伝えたい事は『人が死んでも思い出(その人の物語)は残り続け、また次へと受け継がれていく』なので、母親が死んで主人公がメソメソするシーンとかばっさり無いのは主旨的にわからない事もないけど、母親が目の前で(しかも自分が原因で)殺された翌日にサルと楽しくじゃれてるのは脚本的に最低だと思った。クボの気持ちの切り替えが早すぎる。

この”キャラクターの気持ちの切り替え早すぎない?”現象は作中で多々あり、これが唯一にして最大のKUBOの欠点。なまじ映像と音楽が良いだけに本当にもったいないです。あと作中で謎のまま終わってしまう事(例えばクボの能力とか)が多いのにもモヤモヤしました。

 

ラストは賛否両論か(個人的には批判寄りです)

f:id:horogiri:20171203101321j:plain

 祖父である月の帝がクボの片目を奪おうとしていた理由は、クボから心(感情)を奪い完全な人間にすることで、自分と一緒に月の都で住もうとしていたからでした。元々クボの母親は月出身でしたが、クボの父親に出会い愛を知って下界に住み、そしてクボを生んだのです。それに怒った祖父は刺客である叔母を差し向けていたという訳です。

月に行くのを拒んだクボに対し、月の帝は怒り怪物の姿になって襲いかかります。しかしクボは母親の髪の毛・父親の弓の弦、そして自分の髪の毛を弦にした三味線を奏で、月の帝の記憶を消します。記憶を失った月の帝に対し村の人々は「あなたは優しい人だった」等の嘘(架空の物語)を教え、物語は終わります。

めっちゃ微妙ーーーー!!!

今まで母親の看護してたのがじいちゃんの看護に変わっただけやん!!!なんも解決してないやん!母親も父親もあっさり死んで仲間がいる村も廃村になってるしなんだこれ!いろいろ意図して作ってあるから、監督のインタビューとか読んだらなんか裏の意味がわかるんだろうな~っていうのは察せるんだけど、そんなの元から馬鹿な観客(私の事です)にも伝わるように演出してくれません?!

 

いろいろともったいない映画だと思いました。つまらなくはないんだけど面白くないので人にはすすめられない。映像と音楽は本当に良いので、コララインを気に入った人ならなんとか最後まで見られるかな、と思います。個人的にはコラライン>KUBO>パラノーマンです。

 

 

余談: 日本へのリスペクトは本当にあるのか

f:id:horogiri:20171203135234j:plain

「KUBOは日本へのリスペクトにあふれている!」これも下馬評でよく言われているんですが、もうね、結論から言うとパシフィック・リムみたいな感じです。硫黄島からの手紙みたいな感じではありません。外国の作品でよくあるトンチキ日本です。

物語のベースはかぐや姫のオマージュ。仏教の『故人が帰ってくる』というお盆の概念、灯篭流しなどを扱っている海外作品はかなり珍しいです。マニアックな所に目を付けたなという感じ。ただ側(ガワ)としての日本なので、鳥居をくぐると墓地があったり、沸騰しているお湯の中に生米つっこんで米炊いたりそんな感じ。

 

画像出典:

https://www.youtube.com/watch?v=t90hk4sy_HE